
塾講師が携わる業務は多岐に渡ります。
塾講師=現場での授業だけでは企業として成立しません。
塾講師とアルバイトの業務量は比べ物になりませんが、そのことを理解して入社する方は少ないでしょう。
授業ができるようになるだけでも大変ですが、塾の業務をこなせるようになるにはかなりの時間が必要です。
そこで、新入社員でも即戦力として働けるように、塾業務のマニュアル化は避けては通れません。
ここでは、マニュアルの未整備のポイントやマニュアル化のメリット、IT化に向けてのポイントについてご紹介します。
働き方改革が重要視される現代だからこそ、まずは業務のマニュアル化を推し進めて、社員が長く勤められる体系を整えましょう。
もくじ
マニュアルの未整備が通じるのは初期だけ
マニュアルなしで業務が円滑に回るのは、起業直後だけです。
今後の展開を考えた場合、2教室、3教室を増やしていくとその分雇用が必要になります。
その際、単一教室でできていたことがどんどんできなくなっていくのです。
それもそのはず、起業初期の少数精鋭状態から、経験の劣る若手に仕事を任せなければなりませんからね。
ポイントは、
- 小規模な企業ではマンパワーで通用する
- 職員が増えるとマンパワーが通用しなくなる
の2つです。
目の前だけでなく、10年後、20年後の展開を見据えて、起業初期からマニュアル化を図るようにしましょう。
小規模な企業ではマンパワーで通用する
企業規模が小さい場合、1人の優秀な社員がすべての管理を一括で行えるケースは多いです。
これが塾長にあたる場合が多いでしょう。
もしくは塾長の理解度の高いNo.2の場合もあります。
マンパワーのある社員は、精力的に動けるため、視野も広く、問題を見つける力も高いです。
さらに規模が小さい場合は生徒数も少ないので、十分1人で全体を見渡せるのです。
このような状況では、マンパワーのある人材のサポートをできる職員を増やすのが健康的でしょう。
1人で全体を見渡せる人間を、陰でフォローする人材や指示通りに動ける人材がサポートするのは、企業としてあるべき姿です。
しかし、これで通用するのは、起業直後だけ。
規模が大きくなればなるほど、どこかで歪が生まれます。
塾として、企業としてどのように未来へ進んでいくかを元に、1人のマンパワーに頼るのではなく、組織として機能できる体制を整えましょう。
職員が増えるとマンパワーは通用しなくなる
小規模な企業が中規模、大規模へと拡大していく中で、必要になるのは組織をまとめられる人材です。
授業はもちろん、日々の業務の中でも連携は必須になります。
これは職員が増えれば増えるほど難しくなっていくことは、経営者の方ならお分かりいただけるでしょう。
企業規模が大きくなればなるほど、見えない部分が増えていく。
特に若手の「●●だと思った」という認識のズレは、多くの経営者、管理者が直面した経験があるのではないでしょうか。
組織として強くなっていくためには、このズレを抑えなければなりません。
しかし、部下も人間です。このようなズレを改善するにはかなりの時間を要するでしょう。
そのため、縦の繋がりを強固にしなければならないのです。
幹部、管理職、中間管理職、主任クラスと縦の繋がりがしっかりしていないと、拡大による弊害も起きやすいでしょう。
そのため、それぞれのパイプ役になる人材を育成し、1人の力に頼らない体制を整えなければなりません。
>>塾の運営業務とは?講師とは違った面白さの運営・管理業務を紹介
マニュアルの未整備による弊害
マニュアルが整備されていないと様々な弊害が生まれます。
マンパワーに頼り切った経営では、いつか限界が来ると言えるでしょう。
マニュアルが未整備による弊害としては、
- 業務の遅延
- 業務ノウハウのブラックボックス化
- 業務の属人化
の3つがあります。
大企業ほどマニュアルがしっかり整備されているのは、これら3つの弊害を回避し、あらゆる業務を誰でもできる状態にするためと言えるでしょう。
業務の遅延発生
マニュアルの未整備による弊害で最も発生するのが業務の遅延です。
マニュアルが整備されていないと、業務の進行の早さは職員の能力に左右されてしまいます。
上側がしっかり管理していれば防げる部分もありますが、上の想定外の業務遅延も発生することもしばしば。
例えば、
- 上と下で業務にかかる時間カウントが異なる
- 上が分かっているだろうと思ったことを下が分かっていない
- 部下の業務の抜けが起きる
などがあります。
特に学習塾は常に何かの業務に追われがちな仕事です。
定期テストや期別講習、受験講座など、通常の授業以外の授業も多くあります。
そして、下の職員は目の前のことに囚われがちです。
1カ月、2カ月先を見て行動できる人材はほとんどいません。
そのため、マニュアルにより、
- 実施タイミング
- やり方(スピード、ミスの防止を含む)
- 上長への報告形態
等をしっかり整備しておく必要があるのです。
業務ノウハウのブラックボックス化
塾業務で意外とやり方が難しい業務は多いです。
出来上がったものを見て、
- 見やすい
- わかりやすい
- 誰でも出来そう
と思っても、実はノウハウがないと多大な時間が必要になる業務もあります。
例えば、
- 教材作成
- 座席作成
- カリキュラム整備
- 経理関係
などが挙げられますが、塾内業務のほとんどがノウハウなしでは、かなりの重労働であると考えるべきでしょう。
つまり業務を標準化し、座学やOJT、ロールプレイングを通して、いかにノウハウを共有するかが大切です。
個人のマンパワーに頼った結果、業務がブラックボックス化してしまい、ますます個人に頼った運営に傾いていく恐れもあります。
業務の属人化
上に立つ人間ができることが、下の人間の誰もができるわけではありません。
起業として存続していくためには、どの業務もいつでも誰でもできるようにしておく必要があります。
小規模なときは1人ができればいい仕事であっても、多くなるほどその業務ができる人間を増やさなければなりません。
ここで、マニュアルがないことが問題となるのです。
仮に、上に立つ1人しかできない業務があったとしましょう。
その方が、病気にかかったり、事故にあったりで出社できなくなったらどうなるでしょうか。
たった1人欠けただけで業務が回らなくなる状態は、絶対に避けなければなりません。
また、業務の属人化は1人の負担を増やしているわけなので、労働環境の側面からも改善するべきでしょう。
個を大切にするとともに、あらゆる事態を想定して、業務の属人化を避けるためにも、マニュアル整備は必須と言えます。
塾業務をマニュアル化するメリット
円滑な業務が行われれば、現場での指導もよりよいものになります。
それは、塾講師の残業の多くは、現場の指導によるものではなく、塾内の業務によるものだからです。
働き方改革の波に乗るのは、企業として避けては通れない道でしょう。
そのためには、業務をマニュアル化し、労働環境を整備しなければなりません。
塾業務のマニュアル化によるメリットは、
- 業務が円滑になる
- 業務ノウハウの共有ができる
- 誰でもできる業務が増える
の3つです。
どれも社員の労働環境改善に大きな影響を与えるため、早期に整備するようにしましょう。
メリット①業務が円滑になる
マニュアルによる最大のメリットはミスの削減です。
1人1人の力量に左右されず、一定以上の水準で業務が行われるようになります。
そのため、複雑な処理が必要な業務ほど、マニュアル化の恩恵を受けやすいです。
どのように業務を進めるかが明確化されているため、実施の際に迷ったり止まったりしなくて済みます。
そしてマニュアル化は実施しやすいだけでなく、チェックもしやすくなるのです。
マニュアルに沿って行われているため、最終的なアウトプットの確認だけで済みます。
もちろん、マニュアルは完璧ではないため、やり方等の指導は必要になりますが、圧倒的な時間削減に繋がるでしょう。
組織として行動する上で、誰かのところで業務がストップしてしまうのは十分あり得ます。
止まることで業務時間が伸びてしまう傾向にあるため、マニュアルによる円滑化は大きな効果をもたらすと言えるでしょう。
メリット②業務ノウハウを共有化可能に
塾の業務は専門的な部分はありますが、他の業務にも応用の効くものが多いです。
例えば、
- 成績データのまとめ
- カリキュラムの一覧化
- 塾内テストの結果表示
などはExcelを用いて行うことが多いでしょう。
仕事が遅い職員の多くは、事象によってやり方を変える場合が多いです。
これが1つの業務をマニュアル化することで、企業内でのやり方を覚え、他の資料作成も同じように行えるようになります。
組織として統一したやり方をするのは、理にかなっています。
それは、作成者だけでなく、校正者、確認者が共通の認識で作成業務を行えれば、大きなズレが起きにくいからです。
そのため、1つの業務を通じて、別の業務も任させられるように育成できます。
自ら生み出すのは非常に難しいですし、マニュアルなしで投げてしまっては個の能力に委ねられてしまうため、マニュアル整備によるノウハウの伝達は、企業の財産と言っても過言ではないでしょう。
メリット③誰でも業務が可能に
マニュアル化により誰でも業務ができる状態にすると、組織として非常に強くなります。
それは、これまでマネージャーが行っていた業務時間が浮くからです。
部下ができるような業務マニュアルを整備すれば、確認作業だけで済みます。
1から作成するのと、確認するのでは雲泥の差ですよね。
マネージャー層の空いた時間は、他の重要な仕事へ注力できます。
例えば、
- 研修内容の精査
- 新規教材作成
- 戦略、構想を考える
など、にしかできない業務へ時間を費やせるのです。
誰でもできる業務を、個しかできない状態にするのは危険で、本当にその人しかできない業務へ集中できる環境を作るのは、成果を上げるためには必須。
組織ぐるみで利益を追い求め、よりよい教育を目指していくためにも、多くの業務を標準化する必要があるのです。
塾業務のマニュアル化はIT化の第一歩
塾業務のマニュアル化は現状の業務状態を大きく変え、業務環境を改善します。
しかし、これからの時代、現状から少し変化するだけでは、時代の流れに乗り遅れてしまうでしょう。
最終的に目指すべきところは、塾業務のIT化です。
古くからの慣習を大切にするのも大切ですが、現代の技術と融合させ、職員にも顧客にもよりよいサービスを提供していかなければなりません。
IT化による恩恵は非常に大きいです。
IT化のためのマニュアル整備のポイントは、
- IT化にはマニュアルが必須
- マニュアルさえあれば円滑にIT化へと向かえる
- 守破離の意識づけも必要
の3つがあります。
すぐにIT化しなくとも、その第一歩としてマニュアルを整備しておくのは、企業にとって大きな前進と言えるでしょう。
IT化にはマニュアルが必須
IT化を行うためには、まずは業務のマニュアル化は避けては通れない道。
マニュアルの有無で、IT化の難易度は大きく変わるのです。
マニュアルがない場合、
- システムを入れても社員が使いこなせない
- 自社にあったシステムがわからない
- IT移行期間中の業務に支障が出る恐れも
といった問題が起こる恐れがあります。
他の塾がIT化を進め始めたときに、慌ててIT化しようとしても手遅れです。
様々なシステムが提供されている中で、自社に合ったものを選ばなければ、結果的に非効率になってしまいます。
そのため、まずは自社でマニュアルを整備して業務の円滑化を図り、タイミングを見てそのマニュアルに近いシステムを選ぶようにするのが、失敗しないIT化ためには必要なのです。
マニュアルさえ整備できていればIT化は円滑
マニュアルがあれば、
- マニュアルに沿ったシステムを選べる
- システムによる恩恵を社員が感じやすくなる
- 加速度的に業務が効率化していく
といったメリットが生まれます。
そのため、システム導入を円滑に行うためにも、マニュアルの整備は必須と言えるのです。
各々の塾にとって最適なシステムを選ぶにしろ、自社でシステム開発をするにしろ、現状の業務をマニュアル化しておかなければ、最適なシステムの導入はできないでしょう。
システムは導入してから変更するのは非常に難しいです。
そのため、導入時に見極める必要があります。
そこで、マニュアルの準備が重要になるのです。
逆を言えば、マニュアルさえあれば、IT化は円滑に行えます。
目の前の業務効率化に加え、先を見据えて、あらゆる業務のマニュアル化を図るようにしましょう。
守破離の意識づけも企業発展には必要
人材育成の観点から、守破離を意識させることは企業発展に必要です。
業務にはいろんなやり方がありますが、まずは組織のやり方に乗っ取って行わなければなりません。入社当初から、個の能力に委ねてしまっていては、人材は育ちませんし、長くは続かないでしょう。
特に、新卒3年での離職率が高い業種なので、社会人として組織の中での働き方も教えなければなりません。
そのためにも、マニュアルは絶対なくてはならないのです。
マニュアルを覚え、一人でできるようになってから、
- より効率的なやり方
- 改善案の企画、提案
- 現状のマニュアルの問題点
を報告として挙げさせ、マニュアルのブラッシュアップを図りましょう。
そうすることで、新入社員の会社への理解度も上がり、組織になじみやすくなるだけでなく、企業全体の底上げへと繋がるのです。
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まとめ
塾業のマニュアル化によるメリットは非常に大きいです。
現状のアナログ式からITを取り入れたデジタル式へと変更していくためには、まずは現況業務のマニュアル整備は必須と言えます。
業務をマニュアル化することで、
- 業務負担を軽減できる
- 誰でもできる体制により離職の恐怖が低まる
- IT化を円滑に推進できる
といったメリットが生まれるのです。
労働人口は減少しますが、塾へのニーズは高まりを見せる昨今。
今はよくても10年後には現状では厳しい状況に立たされる塾は多いです。
激化する塾業界での戦いに打ち勝つためにも、まずは現況業務のマニュアル化を推し進め、未来に備えて準備をしていきましょう。
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