生徒と保護者に伝えるべきモチベーションの高め方

コラム

成果報酬によってモチベーションを高めるべきか

アメとムチによって生徒のモチベーションを高める

親や先生、講師にとって「生徒のやる気(モチベーション)をいかに高めていくのか」はとても重大な課題です。

生徒がやる気になれば知識の吸収力も上がり、演習時の集中力も大きく高まります。

反復練習も誰が強制することもなく、本人が納得するまで続けていくことでしょう。

しかし、逆に生徒にやる気がなければ成果を上げることは困難になります。

ですから親や講師は様々な手法を用いて、自発的に勉強に取り組めるように、生徒の「やる気スイッチ」はどこにあるのか探すことになるのです。

最も手っ取り早い方法としては、「アメとムチ」という成果主義的なマネジメントが挙げられます。

一定時間勉強したり、試験で目標点を取ったり、志望校に合格したら報酬を与え、勉強をさぼったらゲームをする時間を減らしたりといった罰を与えます。

生徒はアメが欲しいですし、ムチが嫌なので勉強を頑張ります。勉強時間も増えるでしょうし、試験の得点も伸びる可能性が高まります。

もしかすると学習塾に通い始めると決めた理由もそこにあるかもしれません。

成果報酬によってモチベーションを高めた際の弊害

しかし、このアメとムチで生徒のモチベーションを高める方法には弊害があります。

カーネギーメロン大学の大学院で心理学を専攻していたエドワード・デシ氏は、大学生を対象にしてソーマキューブというパズルである実験を行いました。

二つのグループに分け、1時間パズルを取り組んでもらうのですが、途中で8分間の休憩時間をとります。

デシ氏は別室で、この休憩時間に学生らがどのような行動をするのか密かに観察していました。

Aグループ、Bグループともに1日目は同じ説明で実験を行いましたので差はありません。2日目はAグループにのみ、1つ完成するごとに報酬を与えることを告げました。

すると8分間の休憩時間のうち平均して5分以上もキューブに取り組むようになりました。報酬のないBグループは1日目と同じような行動をとっていました。

成果報酬がモチベーションに効果を発揮することがよくわかります。しかし、3日目に驚くべき結果が出たのです。

Aグループには再び報酬を与えず、1日目と同じ対応にすることを告げました。Bグループは3日連続で報酬はありません。

すると、Bグループの休憩時間にキューブに取り組む時間が増えたのです。明らかに1日目や2日目よりも熱心に取り組んでいました。

逆に報酬がなくなったAグループは、休憩時間のキューブに取り組む時間が大幅に減りました。それも1日目と比較しても少なくなったのです。

つまり「成果報酬は、短期的なモチベーションアップには効果を発揮するものの、長期的なモチベーションに対しては逆効果になる」ということです。

この理由として、デシ氏は、「報酬によって被験者はその活動自体に本心からの興味を失うから」と説明しています。

「これをしたら、これをあげよう」という交換条件付きの報酬は、生徒の「自分でやりたい」という「自律性」(オートノミー)を鈍らせることになるのです。

内的動機付けによってモチベーションを高める

自律性を尊重する

デシ氏はリチャード・ライアン氏と共同で「自己決定理論」(SDT)を構築しました。普遍的な人間の願望を起点にしており、「人は本来、自律性を発揮し、自己決定し、お互いに繋がっていたいという欲求を有している」というものです。

確かにデシ氏の実験によると、報酬を一度も与えられていないBグループは、3日目に最も熱心に取り組むようになっています。

これは「自分の能力を発揮したい」という内的動機付けがモチベーションを高めることに繋がっているのかもしれません。

塾講師は入塾時の保護者面談の際に、生徒のモチベーションをいかに高めるべきかを徹底的に話し合うべきでしょう。

もし親が成果報酬によって、生徒のモチベ―ションを高めようとしているのであれば、理由を説明してやめさせるべきです。

どのような点に自律性を求めるのかは生徒それぞれ異なります。講師は生徒の声に耳を傾け、その要求を理解してあげることが大切です。

課題の設定に自律を希望するかもしれませんし、目標に対してや、部活と勉強の両立に対して自立を切望するかもしれません。

まだ子供ですから、反復練習の重要性など成果を出すための道筋を示し、ある程度のルーチンをこなすことを求める必要は当然あります。

しかし、長期的な生徒のモチベーションを高めるには、自律的になれるような環境を作ってあげることが必要になります。

思いがけない報酬は内的動機付けに有効

生徒の長期的なモチベーションを高める具体的な方法として、「思いがけない報酬」が挙げられます。

これは条件付きの報酬と違い、課題を遂行しなければならない理由として認識される可能性が低いのです。

一日の勉強をやり終わった後、試験が終わった後、入試が終わった後などに、結果よりもそこまでの過程や努力を賞賛します。

「あなたの頑張りを見ていて、私も勇気づけられた」といったポジティブなフィードバックが効果的です。

自分の取り組みが周囲に良い影響を与えていると実感できることは、充実感に繋がっていくことでしょう。

ちなみに賞賛といったフィードバックは表彰式ではないので、人前ではなく、1対1の面談などの際に伝える方が効果的です。

授業後や試験後にはそういった時間を設けていくことは効果的ですし、そういったアプローチを親にも求めていくのが有効です。

まとめ

人には、「学びたい」、「創造したい」、「世界を良くしていきたい」という内なる動機が必ず存在します。

それを生徒が今、自分が勉強していることと繋ぎ合わせることができれば、長期的なモチベーションを高めていくことができるのです。

「何のために勉強をしているのか」、「勉強を頑張ることで、将来社会にどんな貢献ができるのか」を講師は常に語っていくべきでしょう。

それこそが生徒の将来に必要となるモチベーションであり、生徒のパフォーマンスを発揮させ、目標を達成した後もバーンアウトしないで次のステージに向っていける指導ではないでしょうか。

 

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