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株式公開塾から読み解く業界の未来

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業界は不況か。2017年度版『学習塾白書』によれば、2016年の学習塾の市場規模は1兆3630億円(対前年比0.9%増)、2004年が1兆3,620億円でしたので、伸びはありませんが10年以上安定した市場です。

しかし、募集をかけてもなかなか生徒が集まらないというような声をお聞きします。

さらに2018年問題(※)がいよいよ現実のものとなっており、体感的には『不況ではない』とは言えません。

学習塾白書のデータは2016年版ですが、それでは直近の業界動向はどうなっているのでしょうか。上を向いているのかそうではないのか。

今回のコラムでは、リーダーとも言える株式公開塾を分析することで、業界の「NOW」を紐解いてみたいと思います。

リーダー企業がどのような施策に活路を見出しているのかは業界に身を置く立場として大きなヒントになるかと思います。

※1992年以降、18歳人口は下がり続けていたものの、大学進学率が伸びていたため受験者数は増え続けていた。その後「大学全入時期」が実現し、2018年以降は、いよいよ18歳人口の減少に比例して受験者数が減少に転じる。

学習塾2018年度上場企業の業績

上図は上場済みの塾企業の業績です。

こうしてリード企業の業績から、塾業界の未来を読み解くのも一つの方法でしょう。

不況だと言われながらも、各社の業績はバラバラです。

業績を伸ばしている企業もあれば、落としている企業もあります。

もちろん利益率の増減理由については、財務諸表を詳しく確認しなければわかりませんので、この表だけでは判断しづらい面もあるでしょう。

しかし売上高だけを見ると、前年対比で多くの企業が伸びていることを踏まえると、どの学習塾でも業績を伸ばす余地が十分にあると考えるべきかもしれません。

上場塾①ナガセ

売上高は2016年3月期の457億円をピークにほぼ横ばい。高校生部門の新規募集が伸び悩みました。

また、早稲田塾は今期ほぼ半数に当たる11校を閉鎖し、東進衛星予備校に経営資源を集中しています。

高校生部門は売上高対前年比0.6%減、部門利益8.7%減と苦戦しているようですね。

一方で伸びを見せているのは小中学生部門で、売上高対前年比5.5%増、72.2%増となっています。中学受験指導の四谷大塚が好調です。

イトマンスイミングスクールのスイミングスクール部門(前年比1.0%増)とやや増。

企業向け研修などを行うビジネススクール部門(同2.9%増)が堅調に推移しており、教育ノウハウを活用して受験指導以外の分野で収益を獲得するモデルを実現しています。

上場塾②市進ホールディングス

2018年2月期の売上高は157億円、経常利益2.7億円。売上高は5期連続の減少となっています。

経常利益も対前年▲44.5%です。

メインブランドである「市進」において中学生の集客に苦戦していますが、その理由については特に述べられていません。

生徒数回復のため割引キャンペーンを実施したことによりさらなる売上高の低下を招いており、厳しい状況です。

上場塾③リソー教育

2018年2月期の売上高は225億円(前年比8.7%増)経常利益21億円(同5.3%)と好調です。

メインブランドである1:1個別指導のTOMASが好調であり、今年度も8校を新規出店、生徒数は9.4%の増加となっています。

TOMASは個別指導でありながら受験指導をコアコンピタンスに据えている点が特徴。

高付加価値・高価格という、少子化に最適化した商品設計を行っていることが強みです。

補習塾という意味合いが強くなる多くの個別指導との差別化につながっています。

家庭教師の「名門会」、小学受験指導の「伸芽会」などのサブブランドにおいても、一貫して名門受験指導を基軸としている点が特徴。

今後の戦略は他地域への進出であり、現在は首都圏一都三県に展開していますが、今後は地方への出店戦略を発表しています。

上場塾④早稲田アカデミー

2018年3月期の売上高は221億円(対前年比7.1%増)経常利益は11億円(同3.0%増)。

リソー教育と同じく首都圏を中心に展開しており、かつ難関高校、難関中学の受験指導を価値の中心においています。

「難関私・国立高校への圧倒的な合格実績によるブランド力が当社最大の強み」と標榜しており、やはり高付加価値・高価格ということが業績好調の理由です。

生徒数も右肩上がりで推移しており、今期は36,485人(対前年比12.7%増)。

他塾を買収した効果があったとはいえ、まさに絶好調と言えるのではないでしょうか。

上場塾⑤東京個別指導学院

2018年2月期の売上高は191億円(対前年比7.1%増)経常利益は26億円(同14.2%増)。

6期連続の増収増益となっています。在籍生徒数は33,075人(6.8%増)となっていて、東京個別指導学院も非常に好調です。

会社策定の「To go for the NEXT 〜ホスピタリティ経営2020〜」によれば従業員育成に最も力を入れているとのこと。

研修制度の拡充によって従業員のロイヤリティを向上させ、高品質なサービスで高付加価値を提供する。ということです。

また、売上高広告費比率が約16%となっており、上場他社の約2倍の水準である点に注目してください。

積極的なコマーシャルによって規模拡大に成功していると言えるでしょう。

今後は英語の4技能対策、ロボットプログラミング講座に注力し、さらなる事業拡大を目指すそうです。

PERの観点から見た業界の未来

PERという変わった観点から塾業界のマクロ観測をしてみたいと思います。

PER(株価収益率)=時価総額÷純利益であり、純利益に対して何倍の株価がついているかという指標です。

株価は評価(人気)を表すもので、一般的には利益安定成長率が高いほどPERが高い傾向にあると考えてください。

PERが高い銘柄は『将来を見込まれている』ということができます。

例えば、東京証券取引所の全銘柄平均PERは27.2倍(2018年5月現在)です。

トヨタ自動車は10.3倍、オリエンタルランド(ディズニーランド)は48.7倍、LINEは118.7倍となっています。

学習塾関連銘柄(大手5社)を見ると、ナガセ13.0倍、市進ホールディングス19.2倍、東京個別指導学院30.3倍、リソー教育27.8倍、早稲田アカデミー17.4倍です。

単純平均すると21.5倍。

老舗の大手企業ほどではないものの、全銘柄平均を大きく下回り、塾業界は利益成長を期待されていない業界です。

ナガセなど、他業界(スイミングスクールや社会人向けスクール)に打って出る例もありますが、本業の価値を上げることに活路を見出している会社が多いことが理由かと思います。

昨日までの常識が常識でなくなるようなイノベーションはなく「品質を上げる」「教室を増やす」など、いわば普通の施策しか打ち出せないところに業界の弱さがあります。

学習塾の上場予定・スプリックスが新規上場

塾業界に久々に上場企業が誕生します。

実は塾業界には16社上場企業が存在します。

同じ業種では、上場数は4社程度が標準だそうです。

理由は新規上場するにはマーケットや社会にとって新しい価値が必要だからです。

同じような会社ばかり上場させても仕方ないということですね。

その中で塾業界に上場企業が非常に多い理由は、地域に密着している企業が多いからだと言われています。

塾業界での新規上場、そして想定株価から算出したPERは41.6倍、時価総額は350億円が予定されていますから、非常に期待度の高い新規上場案件と言えるでしょう。

その理由に業界の未来が見えるかもしれません。

注目の上場塾・スプリックスの業績

スプリックスが高い評価を受けている一つの理由は業績です。

5年で売上高は2倍、経常利益は8倍に成長しています。2018年9月期予想はでも売上21%増、経常利益98.1%増と強烈な増収増益が予測されています。

「スプリックス」は 個別指導学習塾「森塾」を中心とした、教育サービス事業を行っている企業です。

中核事業である「森塾」は、1対2の個別指導型の学習塾。

中学生を対象として、定期テストで「1科目20点以上成績が上がること」を保証する「成績保証制度」を導入していることが特長です。

「森塾」では、直営教室の運営とフランチャイズ展開をしており、平成30年4月30日現在、直営88教室、FC34教室となっています。

業績の伸びを支えているのは新規出店とそれに伴う生徒数増加であり、教室数は5年で2.3倍増、生徒数も2.3倍増ですので、出店した分だけ業績が伸びていると言えるでしょう。

現在の直営店は東京都・埼玉県・千葉県・新潟県のみで、今後はFCビジネスに注力するということ。

今後の業績にマーケットが期待することも納得です。

では、少子化の流れの中で順調に出店できる強みはなんでしょうか。

もともとフォレスタという教材に強みがある企業で、フォレスタを利用した基礎学力の向上ノウハウ、簡単に言うと「成績を上げられる」という部分です。

今回の上場で調達する資金使途を見ても、24億円中10億円近くを教材開発費に使うということですので、ますます指導の標準化(誰でも成績を上げることができる指導)が進んでいくことでしょう。

最後に

マーケットが横ばいの中で右肩上がりの業績を出している塾があるということは、淘汰されている塾が多いことと表裏一体でもあります。

伸びている塾に共通している部分を探すと一つの答えに辿り着きました。

【結果にコミットする】ということです。

難関校合格、成績向上、塾として本来当たり前であったことが個別指導のブームの中で、一人ひとりに合わせた指導という抽象的な価値にシフトしてしまっていました。

伸びている塾は、塾に通わせる親の根本的なニーズに立ち返っています。

逆に値下げで生徒を集めざるを得ない塾や、例えば「わかるまで面倒をみます」という抽象的な価値観で勝負する塾にとっては厳しい環境が続きそうです。

結果にコミットする。ジムだけでなくあらゆる業種に求められる価値観ですね。

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