【解散整理】自塾の閉業・廃業をするためには

学習塾と社会情勢

激化する塾業界での競争の末、様々な理由から閉業、廃業を検討される方も多いのではないでしょうか。

学習塾は現場の講師も経営者も相当なプレッシャーやストレス、不安との戦いがあります。

少子高齢化、生徒数減少、後継者問題などから、自塾に区切りをつけ、セカンドライフへ準備する方も多いです。

そこで今回は、自塾の閉業、廃業をする際のポイントをご紹介します。

直面する後継者問題や廃業の手順やポイント、事業継承、事業譲渡など、詳しくお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。

塾の後継者問題は深刻

他業種と比べ、塾の後継者問題は深刻な問題になっています。

それは、社会背景に影響を受けやすい職種だからです。

塾業界の後継者問題が深刻になる理由は、以下の3つが多いです。

  1. 少子化の影響
  2. 創業者の属人的な経営
  3. 働き方改革

閉鎖的な環境が多い塾ならではの問題も併せて、後継者問題の深刻化に拍車をかけているのです。

少子化は子どものみならず(講師の年齢層も激減していく)

少子化が叫ばれる現代で、塾業界は顧客の絶対数が減少しています。

一方で、塾の開業数は減少せず、同エリアに複数の塾が乱立している状態です。

エリア内で生徒の奪い合いが起きる中で、講師の確保も課題だと言える状況でしょう。

社員の人材確保はもちろん、アルバイト講師の確保も非常に難しいのが現状です。

「若い先生 = 子供の心をつかみやすい」ということもありますが、若手の確保は非常に大切だと言えます。

誰でもできる職業ではないからこそ、人物重視の採用を行いたい気持ちも他業種に比べて大きいでしょう。

しかし、塾講師を志す若者も減少しています。

このように、生徒、社員、アルバイト講師と、あらゆる面での人の確保が難しくなっているのです。

創業者の属人的な経営が強いと引き継ぐ人がいない

学習塾の創業者は、創業前に他塾に勤めていたケースが多いです。

そのため、創業者は、その塾で結果を残し、教育に対する熱い情熱だけでなく、講師として一流のスキルを兼ね備えています。

講師ならではのスキルとしては、下記のように様々です。

  • 全体を見渡せる洞察力
  • 戦略を練り、複数の物事を同時に考えられる思考力
  • 頭の回転が速い
  • 適切な判断力
  • 人をひきつける話法やテクニックなどの人心掌握力

一流の講師になるほど、これらのスキルは研ぎ澄まされていきます。

そうして独立の道を選ぶわけですから、他人に任せなくても自分一人でできてしまうケースが多いです。

そのため、部下が思うように育たず、気づけば経営が属人的なものになっている場合もあります。

部下が育つには時間がかかるので、属人的な状態を避けるために前もって継承者を選定し、時間をかけて育てていきましょう。

働き方改革をしないと、結婚を考え始めた社員が辞めていく。

雇用促進において、一番の問題は働き方改革です。

古くからの慣習で、塾業界では2023年現在でも過酷な労働が続けられているところが多くあります。

  • 定期テスト対策
  • 受験講座
  • 期別講習

これらだけでも、相当な労働時間が必要です。

それに加え、結果を残さなければ塾としての存続することはできません。

そのため、多くの労力が現場に向けられるのです。

しかし、それでも残業代が正しく支払われていないケースも、まだまだたくさんあるのではないでしょうか。

こうした対応では不満が噴出する恐れがあるため、下記のような対応を取る企業もあります。

  • 裁量労働制
  • フレックスの導入
  • 月末のまとまった休暇

しかし、根本的な労働環境を見直さなければ根本的な解決にならないでしょう。

そのため、20代後半から30代半ばにさしかかる時期に、結婚等を考える社員の退社が始まるケースが多いです。

社員の満足度を上げつつ、生徒の結果を残す。

現代の塾業界は、社会情勢のあおりも受け、非常に経営が難しい状態にあるのです。

>>塾の人材採用・育成・人事評価制度はどうすべき?

塾の廃業手順①生徒と従業員を減らす

塾の廃業を進める上で、最も大切なのは生徒と従業員をきちんと考えることです。

自塾を信頼してくれた生徒や保護者、自らの会社に期待をして入社し、勤め続けてくれた従業員に対して、誠意ある対応をしなければなりません。

これは、「会社として」よりも経営者としての責務です。

ポイントは下記の3つがあります。

  1. 少しずつ規模を縮小する
  2. 従業員のモチベーションを下げない工夫を
  3. 従業員の再就職のサポート

これまでの感謝の気持ちも込めながら、最大限の対応を行いましょう。

前もって少しずつ規模を縮小する

多くの教室や生徒を抱えた状態でいきなり廃業するのは、大勢の方に迷惑がかかる行為です。

経営がうまくいっていない場合であっても、まずは規模の縮小から始めましょう。

教室数を徐々に減らし、生徒の募集数も残席情報を打ち出して調整をかけ、経営状態とのバランスを図るのも大切です。

1教室1管理者で行っている塾であれば、これだけでかなりの準備はできます。

複数の職員を在中させている場合は、規模の縮小とともに再就職へのサポートを行いましょう。

新規出店にも力がいるように、撤退時もかなりの労力が必要です。

  • 保護者や生徒への通達と対応
  • 不動産などの契約解除
  • 備品回収などのスケジューリング

などの付随業務を抱えながら、現場では生徒の指導が行われています。

厳しい言い方になりますが、後者を撤退しても、生徒の入試はなくなりません。

特に受験生は、一生に一度の人生を決める試験があるのです。

そういった生徒に対して、真摯に向き合いたいと抱える職員も多いので、教室撤退は計画的に行わなければ、現場の混乱と講師への負担を増大させかねません。

終わりだからよしではなく、最後まで真摯な姿勢を貫くようにしましょう。

従業員のモチベーションが下がらない工夫を

教室撤退が決まると従業員のモチベーションは低下します。

これを下げないようにサポートしなければ、経営状態が悪くなるでしょう。

モチベーションの下がった従業員は、アルバイト講師や生徒に悪影響を与え、現場の士気を低下させます。

いい評判を生み出すのには時間はかかりますが、悪評は一瞬です。

そのため、撤退する教室だけでなく、他教室への評判へも繋がります。

「経営をやめるから問題ない」ではありません。

従業員にはこれからの人生があります。

無気力状態で、どんどん状況の悪くなる現場を担当させるのは、今後の仕事に対するモチベーションを奪うことでしょう。

そうして自信を無くしつつ、現場に入っていると、必ずミスが起き、生徒に迷惑をかけます。

職員のモチベーションを下げない工夫は、昇給や賞与などのお金だけではありません。

コミュニケーションや思いを伝える、背中で見せるなどで、十分モチベーションは維持できるでしょう。

塾として、人を相手にしてきた経営者の腕の見せ所というわけです。

「立つ鳥跡を濁さず」ですから、撤退が決定しても最後まで自社のサービスの質を落とさないために、従業員のモチベーションを下がらない工夫を行いましょう。

従業員の再就職へのサポートを最大限に

これまで業務に従事してくれた従業員に対する感謝の気持ちも込めて、再就職へのサポートを行うのも廃業時に大切な対応の1つです。

特に塾講師は、再就職が難しい職種と言われています。

講師の仕事が簡単というわけではありませんが、他業種に活かせるスキルが極端に少ないのです。

そのため、塾講師の転職活動は非常に厳しいと言われます。

職種はもちろん、給与面でも本人の希望通りの再就職先を見つけるのは至難の業です。

経営者としての人脈をフル活用し、従業員の未来を守るのも経営者の仕事の1つ。

職場の紹介はもちろん、仲介をする必要も出てくるでしょう。

完璧を目指す必要はありませんが、従業員の未来を守るのも経営者の責務です。

生徒の成績上昇、志望校合格へ向かうのと同じように、これでもかというくらい、従業員を向き合うようにしましょう。

やはり、会社を支えてくれた従業員に対する礼儀ですから、真摯な姿勢で対応するようにしてください。

塾の廃業手順②株主総会で解散の決議をする

内部に対しての廃業準備の他に、社としての廃業準備があります。

それが、株主総会での解散決議です。

株主からの反対が出る場合もあるので、

  1. 廃業に入る前からの根回し
  2. 近隣の塾への生徒引継ぎの打診

など、裏での活動も必要になります。

生徒、保護者、従業員だけでなく、経営の基盤を支えてくれた株主たちへの誠意ある対応も、廃業時には必要です。

なるべく円満な廃業を迎えられるよう、尽力しましょう。

廃業に入る前から根回しが必要

一般的に会社を解散するためには、株主総会を開催し、特別決議が必要です。

特別決議とは、下記の条件を満たすことです。

  • 行使できる議決権のうち、過半数を持つ株主の出席
  • 出席株主の2/3以上の賛成

また、解散と同時に清算人の選任も必要で、これにも株主の賛成が必要になります。

株主総会を開かずに廃業を決議するには、株主全員の書面決議が必要です。

どちらの方法をとるにせよ、株主の同意を得られなければ、廃業できません。

そのため、株主の賛成を得られるよう、事前の根回しが必要になるのです。

ここまで支えてくれた株主たちの納得を得た上で、円満かつ円滑な廃業手続きへと移行するためにも、事前準備はしっかり行っておきましょう。

近隣の塾に生徒の引継ぎ打診をしておく

株主総会での決議を得やすくするためには、生徒の引継ぎ問題をクリアしなければなりません。

逆に言えば、生徒の引継ぎ交渉が順調に進んでいれば、株主の同意も得られやすくなります。

やはり、廃業に伴い一番の迷惑を被るのは生徒であり、その家庭です。

廃業の決議の際、生徒の今後については議題に上がることでしょう。

水面下で、近隣の塾に廃業の旨を伝え、外堀をしっかり埋めていく。

廃業後の顧客のことをもしっかり考えていられれば、株主も納得するはずです。

また、生徒サイドは転塾に際し、通塾継続よりも大きな費用が必要になります。

そのため、家計の圧迫につながる恐れもあるため、廃業に伴う近隣の塾への引継ぎの打診は必須です。

他塾も生徒確保に躍起になっているため、引継ぎの打診を受け、転塾割引などのキャンペーンを実施する可能性も高くなります。

このように、株主総会前にどこまで動けられるかがポイントです。

廃業手続きをスムーズに進めるためにも、外部にしっかり目を向けるようにしましょう。

塾の廃業手順③清算手続きを行う

廃業手順の最後は、清算手続きです。

株主総会での清算人選任が済んだ後、清算事務が始まります。

経営状態に問題がない場合は、スムーズに清算手続きを進められますが、問題は債務がある場合です。

株主総会の報告が承認されると会社は消滅しますが、それだけでは社会への公示にはなりません。

ここでは、債務がある場合の手続きについてご紹介します。

債務がある場合は通常の解散・清算はできないため注意

換価回収の資産で弁済できない場合は、通常の解散・生産はできません。

債務超過の場合、下記のいずれかを行う必要があります。

  • 特別清算手続き
  • 破産手続き

円満な解決の場合は、特別清算になりますが、下記の場合は破産手続きとなるでしょう。

  • 債権者の同意が得られない
  • 一般債権の配当が回らない
  • 株主会社でない

破産手続きの場合、経営者の名前で行うことが多いため、できれば避けたいと思われる方も多いです。

破産手続きとなると、下記のような複雑な手続きが必要となります。

  • 従業員への解雇予告支払い
  • 裁判所への申し立て
  • 破産管財人の選定
  • 債権者集会と債権者への配当

廃業といえど、あっさりと決められるものでなく、特に債務がある場合は、大きな労力が必要です。

そのため、廃業以外の選択肢も考えておくといいでしょう。

可能なら事業承継・事業譲渡を視野に入れる

廃業は話が円滑に進む場合もあれば、前述のように債務超過による破産手続きへの移行があります。

そのため、会社の状態によっては、経営者が肉体的にも精神的にも大きなダメージを被る恐れがあるのです。

そこで、廃業以外にも事業承継や事業譲渡も考慮しておきましょう。

親族や経営幹部クラスに事業権を引継ぎ、他塾や外部の起業家に譲渡は可能です。

事業継承であれば、塾の名前やシステムを残せますし、譲渡により塾名が変わっても、教室が存続できるため、生徒や従業員への負担も最小限に抑えられます。

どちらも簡単にできるものではありません。

しかし、廃業は多くの方にショックを与え、不安など負の感情を生み出すものです。

可能であれば、事業承継、事業譲渡も視野に入れ、周囲に負担の少ない道も選択肢の1つに入れておきましょう。

>>【存続の手段】塾の事業承継・事業譲渡も視野に入れよう

まとめ

一言で廃業と言っても、廃業に至るまでには多くのステップを踏まなければなりません。

その過程で、生徒や保護者、従業員、株主と多くの人を巻き込む必要もあります。

また、経営者自身にとっても肉体的かつ精神的に疲弊していくでしょう。

廃業の選択は、メリットもあればデメリットもあります。

そのため、視野を広く持ち、経営者でなくなるための別の方法論も考えなければなりません。

ここまで先頭に立って企業を引っ張ってきたからこそ、様々な困難に打ち勝ってきたはずです。

どのような形であれ、最後は納得のいく形で事業を終えられたら、後々満足できますよね。

会社を締めるのは、苦渋の決断である場合が多いです。

だからこそ、周囲の人にとってもよりよい選択を取るようにしましょう。

そのことが、遠い将来、自分の人生を振り返ったときに、きっと経営者様の納得にもつながるはずですから。

【存続の手段】塾の事業承継・事業譲渡も視野に入れよう
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