練習は本番のように 本番は練習のように

コラム

入試の季節。基礎問題に加え、思考力、判断力、表現力を問う問題も乗り越えないといけない時代です。

それらの能力を鍛えるには、何が重要なのでしょうか。

限られた時間内で瞬時にそれらの能力を発揮するプロ棋士の世界に、そのヒントを探ってみたいと思います。

三手一組

将棋には、自分が一手指したら相手がどう指すか、それを三手先まで読めれば良い手を指せるという「三手一組」という格言があります。

一つの局面あたり平均80通りの差し手があるので、三手先までの差し手は80の3乗通り、つまり51万2千通りあります。

人間が瞬時にそんなことができるとは思えませんが、指導対局と呼ばれる場では、プロ棋士が何人ものアマチュア棋士の盤面を巡回しながら、瞬時に一手を指して回っています。

プロとアマチュアでは何が違うのでしょうか。

プロとアマチュアの思考過程の違い

オランダの心理学者であるデ・フロートは、チェスの世界的プレーヤーであるグランドマスターとアマチュア上級者にチェスの局面を提示し、指し手を決めるまでの思考過程を比較しました。

思考過程の違いが、何手先まで分析したかという「読みの深さ」なのか、候補手についていくつ分析したかという「読みの広さ」なのかを分析したのです。

驚いたことに、プロとアマチュアの間にはその二つの能力には差がなく、その差は「直観力」にあったことが判明しました。

プロが直観で思いつく手の多くが最善手であり、最善手の中から選んでいたのに対し、アマチュアはその最善手を直観で思いつくことができなかったのです。

読みを行う以前の直観の段階で勝負がついていることになります。

将棋でも、数々の棋戦タイトルを獲得した米長邦雄名人は、「ある局面を一目見ただけで即座に指しても、100回中95回は最善手を指せる」と述べています。

直観の正体

人工知能のパイオニアでもあり、ノーベル経済学賞を受賞した米国のハーバート・サイモン博士は、チェスの駒配置に関する記憶実験を行いました。

プレーヤーに、ある局面の盤上の駒を10秒間見せた後、記憶を頼りに局面を再現させました。

結果、正確に記憶できた駒の枚数は上位者が20個でしたが、下位になると5個で、駒配置の記憶はチェスの棋力に比例することがわかりました。

しかし、駒をでたらめに並び替えると棋力に関係なくほとんど覚えられなくなることも判明しました。

つまり、上位者は駒を一枚ずつ覚えているのではなく、チェスの戦略や戦術を反映した局面自体を記憶していたのです。

将棋にも「矢倉囲い」「美濃囲い」等、様々なパターンがあり、それらを数多く解き、記憶しているほど、本番で直観的に最善手を選ぶことができるのです。

 

東大を目指す生徒は、過去問を10年分ではなく50年分解くと言います。

その過程で将棋のような様々な思考や解法パターンを記憶することによって、本番の限られた時間や手がかりを元に最善手を選び出し、最善手の中から判断することができます。

思考力や判断力のような抽象的な能力を問われても雲をつかむような気分ですが、入試本番でモノを言うのは直観力であり、その直観力は、入試以前のパターン演習量で決まると考えれば、具体的に動くことができます。

「練習は本番のように、本番は練習のように」取り組む意識で、入試を乗り越えてくれることを願いたいものです。

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