学力も運のうち

コラム

先日、宮城県の学習塾で子どもの学力格差が拡大しているという話を聞きました。

現場で感じる仮定の話としつつ、宮城県は低学力層が他県より早く多くなりそうな予感があるそうです。

今年、10年前の東日本大震災のときに4~5歳だった生徒が卒業し、学校から配られる学年の成績分布図を見てみると、今年の高1(昨年度の中3)は完全に上位層と下位層に分かれていて、平均前後の中間層がほとんどいなかったというグラフになっていたそうです。

自塾だけでなく、宮城県全体の学習塾からも同じような話を数多く聞いているそうです。

誰が敗者復活できるのか?

「2015年社会階層と社会移動調査研究会」の研究で、最初の高校受験で失敗しても、大学受験で敗者復活できた人はどんな人かを調査しています。

出身階層として、高校の偏差値ランク、地方か都会かの出身地域、15歳時の暮らし向き(豊かかそうでないか)、学習塾等の利用経験、親の学歴、を指標として敗者復活できた人を調査しました。

結果、年齢層や性別、高度経済成長期や少子化等の時代情勢に関係なく、敗者復活できた人は「高い階層出身者」ということでした。

失敗をすべて個人の能力と努力に帰属させるのではなく、復活できたことは、出身階層的に恵まれ、様々な形態の資本が大卒となることを手助けしていると分析しています。

「実力も運のうち」

ハーバード大学教授のマイケル・サンデル氏は、著書「実力も運のうち」の中で、能力主義の傲慢さを痛烈に批判しています。

自分の成功は、自分の才能と努力によって獲得したものであり、成功しないのは努力が足りないからだと考える能力主義者は、たまたま才能を認めてくれる社会に生まれた幸運のおかげであることを意識せず、現在の成功は自分の能力に値すると考えるのは傲慢であると主張しています。

特に、能力主義的なおごりの最も苛立たしい特徴の一つとして、学歴偏重主義を挙げています。

能力は環境に依存する

発達心理学の権威カート・フィッシャー教授の「ダイナミックスキル理論」によると、人間の能力は、置かれている環境などの特定の状況の中で磨かれ、置かれた環境などの状況に応じて、能力レベルが大きく変動することが指摘されています。

同じ能力でも、ある状況においては高いレベルで能力を発揮でき、別の状況に置かれると、低いレベルでしか能力を発揮できない場合が生じるそうです。

親の学歴や経済力等の出身階層は、子ども達にはコントロールできません。

しかし、自分を取り巻く環境や運を高めることはできます。

ある塾長の話ですが、「面談する時、生徒の学力は会った瞬間にわかる。学校の教材を持って来させると、学力上位層は教材をきれいに机の上に置くが、下位層はぐちゃぐちゃに置く。」と言われていました。

これも、学力を発揮できる環境づくりを意識している例だと思います。

メジャーリーガー大谷翔平は、ゴミ拾いをする理由は「人が捨てた運を拾う」と表現しています。

子どもの出身階層で運命が決まるのであれば、将来の悪循環を断つためにも、低階層の連鎖から子どもが脱け出す歴史的な転換点となる、学習塾の役割は大きいと言えます。

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