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マスク時代に考える表情と感情の関係

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教室ではマスク着用が日常となりました。顔半分が隠れ、目のまわりの表情で感情を伝え、相手の想いを察しなければいけません。

生徒の気持ちを掴めているのか、改めて考える時代です。

白目の役割

九州大学の小林洋美教授は、霊長類88種類の目を調査し、ヒトにだけ白目があることを研究で明らかにしました。

サルやチンパンジーの目は茶色で視線を隠すことができ、次の行動が捕食者に予測されず、身を守ることができます。

一方、ヒトの目は白目で視線が明確にわかってしまいます。

視線を“読まれる”リスクにさらされるわけです。

しかし、二足歩行をし、仲間と一緒に獲物を捕まえるには、目で合図することが効率的です。

視線を“読ませる”ことが重要になったのです。また、人間だけが食卓を囲んで向き合って食事をします。

食事の目的が栄養補給にあるのなら他者と向き合う必要はありません。

対面して視線から感情を読み取り、信頼関係を深める場が食卓だったのです。

表情は感情を表すのか?

1980年代、アメリカの心理学者ポール・エクマンらの研究では、人間の表情は「怒り」「悲しみ」「恐怖」「驚き」「嫌悪」「軽蔑」「喜び」の7種類に分類され、その表情は①目の上の眉周辺、②目のまわりの部分、③口の周辺部分に表れるとしています。

表情は人間に共通したもので、表情の特徴を読み取れば、感情もわかると考えました。

ところが、「情動はこうしてつくられる」(2019年)の著者であり心理学者のリサ・フェルドマン・パレットは、顔の表情を司る顔面筋の動きや脳の働きを研究した結果、人間に決まった顔の表情があるわけではなく、脳が自分の過去の経験に基づいて相手の感情を予測しているに過ぎないと結論づけています。

例えば、「むかしむかし、山の彼方の魔法の国で、美しいお姫さまが出血多量で死にました。」という文章に違和感を感じるのは、おとぎ話に関する知識に基づいて脳が先を予測した結果、エラーを引き起こしています。

自分の過去の感情経験に基づいて脳が相手の感情を予測しているだけで、人間共通の表情があるわけではありません。

表情を読み取るには経験が必要

追手門学院大学研究チームによる論文「看護経験年数による表情認知能力の変化」(2017年)では、看護経験年数による表情や感情の読み取り能力について報告されています。

対象は、看護経験が9年以上の看護師、5年以下の看護師、そして看護経験がない最年少の大学生、に感情を読み取る実験をしました。

結果、患者の怒りの表情を読み取る能力は、9年以上の看護師の方が5年以下の看護師や若い大学生より高くなりました。

一方、喜びや笑顔表情の読み取りについては、9年以上の看護師と大学生との差はなく、大学生の方が5年以下の看護師より高くなりました。

つまり、表情を読み取る能力は、年齢より職務経験に左右され、笑顔の少ない入院患者相手の職場環境では、笑顔判断の機会が少ないことが影響していると結論づけています。

 

医療従事者の中には、患者の感情を引き出すためにユーモアを取り入れている人も多いようです。

表情を読むには感情経験が必要ですが、経験が足りなくても、ユーモアのような言葉の力で心を開かせ、そこから本当の感情を読み、コミュニケーションを深めていくこともできます。

マスク越しに見える視線や表情の意味を、コロナ禍を機に再考してみてはいかがでしょうか。

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